耳痛
耳痛の主な原因は下記です。
耳(みみ)
Ear
耳に蓋をされたような感じや耳に水が入っているような感じを耳閉感と呼びます。この症状の主な原因は下記です。耳は左右のバランスがとれた状態が正常なので、どちらかの耳の聞こえが悪くなったりするとバランスが崩れて、いい方の耳が悪くなったような錯覚や両耳が悪くなったような錯覚をすることが多いです。
耳あかがたまった状態です。ご自分で耳掃除をしていると耳あかを詰まらせてしまうことが少なくありません。また、外耳道湿疹を作ってしまう結果になることもあります。耳あか自体では痒くなりませんが、湿疹ができると痒くなります。耳あか掃除はなるべく耳鼻咽喉科医院でやるようにしましょう。通う頻度は、成人だと平均で1年に一度くらいです。
外耳道に湿疹ができた状態です。掻痒感を感じますが、普通は痛みはありません。外耳道の掃除をやりすぎると簡単に湿疹ができます。かゆいのでさらに書いて悪化させることをよく見かけます。耳の掃除はご自分ではなさらずに、耳鼻咽喉科でやってもらうことをお勧めいたします。通常は耳あかでは外耳道は痒くなりません。だいたいは点耳薬や塗布薬で治ります。が、繰り返すことが多いです。
ひどくすると、細菌感染を起こして赤く腫れて痛くなります(外耳道炎)。
外耳道に炎症を起こした状態です。非感染性、細菌感染性、ウイルス感染性や真菌感染性(外耳道真菌症)があります。耳の痒みが続いて綿棒などで耳をいじっていると起こります。必要があれば耳だれの培養検査をします。
痒みや痛み、耳だれなどが主な症状です。耳の中を清掃と、塗布薬や点耳薬で治ることが多いですが、症状が強い場合は抗菌剤や消炎剤の内服を併用します。
外耳道湿疹などで耳の中がじくじくしていると、時にカビが感染を起こすことがあります。外耳道の様子と耳だれの培養検査で診断をします。カビは通常の細菌と異なり、抗菌剤の内服や塗布では治りません。耳の中を清掃と、塗布薬や点耳薬で治ることが多いです。ひどくなると耳たぶまで病変が広がります(耳たぶだけのこともあります;耳介真菌症)。
外耳道炎や外耳道湿疹が悪化したり、ピアスの穴から感染を起こしたりして、耳たぶが真っ赤に腫れ上がった状態です。耳たぶを形作っているのは軟骨です。そのため、感染が悪化すると軟骨炎となります。ここまで感染が進むと内服薬(抗菌剤)では治まりにくく、点滴の抗菌剤が必要になることが多いです。原因が溶連菌であるものを丹毒と呼びます。
レスリングや柔道、ラグビーなどで耳介を擦ったり、ぶつけたりした時に耳介が腫れることがあります。耳介の皮膚の下(皮下)に血液や滲出液が溜まった状態です。放っておくと血液や滲出液が固まり耳介の変形が治らなくなってしまうため、針などで溜まった血液や滲出液を抜きます。しかし、また血液や滲出液が溜まってしまうことが多く、抜いた後に耳介を圧迫固定することが多いです。
難聴には様々な分類があります。最もよく使われている分類を解説いたします。
中耳に滲出液がたまった状態です。鼓膜の動きが制限されて、耳小骨の動きも悪くなるために、伝音難聴になります。自覚症状としては耳に蓋された感じや自分の声が耳に響く感じ、難聴、耳鳴り等です。通常は痛くなりません。乳幼児と高齢者に多く見られる病気です。乳幼児の場合には片耳だけだと発見が遅れることが少なくありません。
耳管の機能が悪くなって鼓室の空気を入れ替えることができなくなると、鼓室が陰圧になります。すると、鼓室の壁の血管から液体がにじみ出てきます。これが滲出液です。鼓室が陰圧になるだけでも耳に蓋されたような感じになりますが、滲出液が貯まると伝音難聴になります。滲出液が貯まれば貯まるほどひどい難聴になります。
耳管狭窄症、鼻炎、急性咽頭炎、アデノイド増殖症、鼻咽腔腫瘍等々、原因は様々です。治療方法も原因により様々です。難治性の場合には鼓膜にチューブを留置する場合があります。
耳の痛み、発熱等で始まることがほとんどです。すべての年代で起こりますが幼少児の代表的な病気です。幼少児では、ぐずるだけのことも珍しくありません。機嫌が悪くて発熱している幼少児では、鼓膜の様子を見ることが必要です。鼻風邪(急性鼻炎、急性副鼻腔炎)や急性咽頭炎から耳管を通じて鼻や鼻咽腔から中耳へ感染が伝播することで始まります。
基本的に内服と鼻炎等に対する処置で改善しますが、滲出性中耳炎に移行する場合もあり、また、もともとあった滲出性中耳炎が急性増悪して急性中耳炎になる場合もあります。このような場合には治るまでに長期間かかることが少なくありません。また、乳幼児よりも成人の方が治りにくい傾向(治るのに時間がかかる傾向)があります。
鼓膜に穴(永久穿孔)が開いた状態です。穿孔があるため、細菌等が中耳に入り安く、中耳炎(慢性中耳炎の急性増悪)を反復することが多くなります。急性増悪は耳だれで気がつくことが多いですが、難聴が悪化することもあります。
穿孔が小さければ放置で問題ないことも多いですが、大きい場合には手術にて穿孔の閉鎖を行い、感染を繰り返さない様にします。外来日帰り手術で閉鎖できる場合もあります。
鼓膜は弛緩部と緊張部で構成されています。弛緩部は緊張部よりも薄いため、奥に陥凹することがあります。陥凹が深くなると、奥で垢が貯まるようになります。いったん貯まり始めると、陥凹は袋になって奥で広がっていきます。袋が大きくなると、耳小骨を溶かしたり、周辺の骨を溶かしたりします。すると、伝音難聴が始まります。
治療には手術が必要です。
耳小骨の動きが悪くなる病気です。伝音難聴になり、徐々に悪化していきます。治療には手術が必要です。
突然起きる原因不明の感音難聴です。蝸牛(および前庭)のウイルス感染や循環障害が原因として推測されています。朝起床後の難聴で気づくことが多く、耳鳴りやめまいを合併することがあります。
ステロイド(副腎皮質ホルモン)や循環改善薬などの内服や点滴が治療の選択肢となりますが、症状が出てから2週間以上経過すると改善率が低下すると言われています。難聴や耳鳴りが出現した際にはなるべく早期の受診をお勧めします。
文字通り、急に低い音が聞こえにくくなる感音難聴です。内リンパ水腫が原因であることが多いと言われています。治りやすい反面、反復しやすい面があります。反復によって徐々に聴力が悪化していきます。両耳化する場合やめまいを伴う場合もあります。以前は突発性難聴に含まれていましたが、近年、独立した疾患となりました。
治療は、循環改善剤や漢方、ステロイド等の内服で、難聴の程度で選択されます。
めまいの原因のほとんどは耳(前庭)の故障なので、耳鼻咽喉科領域の病気であることが多いです。しかし、注意しなければならない、中枢(脳幹や小脳)障害のめまいがあります。命に関わる場合もあります。中枢障害のめまいでは、ろれつが回らない、手足に力が入らない、等の特徴がありますので、このようなめまいの場合には脳神経内科や脳神経外科を受診してください。
めまいには回転性と浮動性があります。しかし。同じ程度のめまいがしていても感じ方は人それぞれです。同じめまいをある人は回転性と感じ、ある人は浮動性と感じます。めまいの感じ方だけではめまいの原因は判断できません。また、回転感が強いから困っためまい、とも限りません。むしろ回転感が弱いめまいに困っためまいが隠れていることが多いです。
耳石器の耳石がはずれて半規管に入りこんで起こる、頭を動かすたびに回転性めまいが起こる状態です。平均的なめまいの持続時間は2-3分間です。耳鳴りや難聴は伴いません。
前庭に炎症が起こった状態です。炎症の原因はウイルス感染と循環障害が考えられています。典型的には回転性めまいが持続します。
ステロイド(副腎皮質ホルモン)や循環改善薬などの内服や点滴が治療の選択肢となります。
最近提唱されためまいの概念についてご説明いたします。1つは片頭痛性めまい(前庭片頭痛)で、もう1つは持続性姿勢-知覚めまい(PPPD)です。
めまいに片頭痛発作を伴う病気です。めまいの性状は様々です。非発作期にはめまいは明らかではないことが多いのですが、発作期には眼振が認められることが多く、難聴や耳鳴を伴うこともあります。原因としては、めまいを起こした物質が、血管拡張作用によって頭痛を発症させるとする説が有力です。
立ったときや、動いたとき、動いている物を見たとき等にめまいを感じる状態です。めまいの性状は様々で、めまいは長いときも短いときもあります。めまいの頻度は、隔日あったりほぼ毎日だったりします。原因ははっきりしていませんが、この状態になる前にひどいめまい発作を起こした経験があったりします。
近年注目されている難聴の病気にAuditory Neuropathy(AN)とAuditory Processing Disorder(聴覚情報処理障害:APD)があります。簡単にご紹介いたします。
日本語訳がありません。ANは次のような特徴があります。
①音は聞こえるが、言葉を聞き取れない。年齢性の変化で誰もがことばの聞き取りが悪くなりますが、この病気では年齢に関係なく、若いうちからこの状態が起こります。
②音の振動を電気信号に変える部分に明らかな問題はない。
③電気信号に変換された音の情報を脳に伝える部分に障害がある。
静かなところでは問題なく聞こえるし、相手の話も聞き取れるが、ガヤガヤしたような所になるといきなり聞き取りが悪くなるのが特徴です。そして、既知の聴力検査の結果は全て正常です。このような疾患単位が存在することが推測されるまでは「気のせいだから」と、相手にされないことも少なくなかったと考えられます。
耳介から鼓膜までが外耳です。耳の穴から鼓膜までを外耳道と呼びます。
鼓膜の奥の空気の入っている部分が鼓室です。耳管で鼻咽腔と交通しています。耳管は中耳の換気と空気圧調整を行います。また、鼓室は乳突洞口で乳突蜂巣と繋がっています。乳突蜂巣も空気で満たされています。
鼓室には連なった3つの小さな骨(耳小骨)が入っています。ツチ骨(鼓膜にくっついています)、キヌタ骨とアブミ骨(前庭窓(卵円窓)にはまっています)です。耳小骨は鼓膜の振動を内耳に伝える役目を担っています。
鼓膜は弛緩部と緊張部に分かれています。弛緩部は比較的薄いので、陥凹しやすく、陥凹がひどくなると真珠腫性中耳炎の始まりとなるので、注意が必要です。
内耳は側頭骨の中に存在しています。聞こえを担当している蝸牛とバランス(めまい)を担当している前庭の2つの部分から成り立っています。蝸牛には蝸牛神経が、前庭には前庭神経が入り込んでいます。この2つの神経は顔面神経と一緒になって内耳道を通って脳幹に入っています。そして、内耳は前庭窓(卵円窓)と蝸牛窓(正円窓)で鼓室と面しています。
蝸牛はカタツムリ状の形をしています。出口付近は狭くて低い音を担当しています。頂上付近は広くて高い音を担当しています。3列の外有毛細胞と1列の内有毛細胞が音の振動を電気信号に変換します。外有毛細胞は小さな音を聞くときに大切な細胞です。
前庭には、5つの平衡覚のセンサーがあります。三半規管(3つの半規管:外側半規管、上半規管、後半規管)と狭い意味での前庭(耳石器:卵形嚢、球形嚢)です。近年、様々な検査方法が開発され、この5つのセンサーを個別に、左右別々に状態を把握できるようになってきました。末梢前庭障害によるめまいの場合、どのセンサーの不具合が原因か、分かるようになってきているのです。